エスニック

最終更新日:2012年7月17日

7月4日の「今日の課題」での質問と回答です。


 質問 回答 
今日の講義でバリアフリーに対するハードの面での整備は、日本ではすごく進んでいるというお話がありました。逆に、バリアフリーに対する若者や健常者の理解、いわゆるソフトの面での整備はあまりうまく進んでいないと感じます。その点に関して、東京都もしくは日本で具体的に取り組んでいることはありますか? 例えば7月9日に都市工学の技術と倫理で行った「バリアフリー教室」のような取り組みは、最近では特に小中学校で広く行われていますが、個人的には、大学生や社会人など成人してからもう一度このような機会を経験することが重要だと思います。
点字案内板や誘導ブロックなどさまざまな設備が充実してきたように思えるが、実際どれがどのくらい障害者の方の負担軽減につながっているのだろうか? 実は視覚障害者の中でも点字が読める人は1〜2割程度と言われています。また、どのくらい負担軽減につながっているかを定量的に分析した研究はあまりありません。卒業論文などの研究テーマになりますので、関心があれば是非取り組んでください。
バリアフリーにおけるハードとソフトとは、ハード→設備、ソフト→人々の心という理解であってますか? ハード面の施策というと道路や鉄道など交通システムに関するインフラ整備、ソフト面の施策というと情報提供や教育や経済的援助などを意味するという理解だと思います。
街中を歩いていると、障害者とそうでない人との間に意識の差(助けたい⇔助けられたくない)があり、それがバリアフリーへの理解を妨げていると思ったのですが、その部分をどのように埋めていけばよいと思いますか? 助けが必要な時に、助けを求めやすい環境が重要だと思います。コミュニケーションが必要ですね。難しい問題ですね。
首都圏の話が多かったですが、三大都市圏以外の人口減少地に関することが気になります。資金不足で公・民間ともにバリアフリーに金を割けるのかという疑問や、バスの本数減などでモビリティが悪くなる中、どのように生活が成り立っているのか等が気になります。 おっしゃる通り、大都市と地方都市では都市の活動システムも交通システムも異なりますので、バリアの種類が異なります。公共交通が不便な地域では、住民が主体となって地域のモビリティを確保しようとする取り組みも各地で行われています。また、少子高齢社会において、税金をバリアフリーを含めて何にどれだけ使うべきか、政治の問題ですね。
バリアフリーの問題を交通の講義で聞くのは少々意外でしたが、交通まちづくりにおいて重要な問題であることがわかりました。近年唱えられるコンパクトシティ構想でのまちづくりにおけるバリアフリー整備について、例えば富山市で行われている独特のものなどがあれば伺いたいです。 日常生活で必要な外出活動機会へのアクセシビリティが高いコンパクトシティは、高齢者、障害者、子育て世帯にとっても生活しやすいまちだと思います。富山市のバリアフリーに関する独特の取り組みと言われると思いつきませんが、歩道のバリアフリー化やLRTなど、交通システムの基本的なバリアフリー化は進められていると思います。
@交通系で、今ホットな話題はなんですか? BRT? 整備新幹線?
A費用便益分析で、費用や便益の計算で用いる各種パラメータの値は毎回の統計で算出するのですか? 全国とかで共通したパラメータセットなどはないのでしょうか?
@LRTとかコミュニティサイクルとか色々ありますね。
A国で費用便益分析マニュアルが作成されており、各種パラメータの値をはじめ、標準的な手法として紹介されていますが、「担当部局において独自の項目や手法の追加を検討し、アカウンタビリティの向上を図ることが重要である」とも記載されています。
バリアフリーについてホームドアとかは費用が多くかかってしまうのですか? 7月9日の都市工学の技術と倫理の「交通バリアフリー教室」で東京メトロの方がお話しされていたように、ホームドアの設置には多くの費用がかかりますね。高さの低いホームゲートの方が、効果はほぼ同等で安価のようです。
コミュニティバスであったり、スペシャルトランスポートサービスなど、地域に現実的に根付いていくための案などを知りたいと思いました。 行政の関与も必要ですが、その地域の住民自身が、この地域にはこういう交通システムが本当に必要だから皆で工夫して維持していこうという意識や努力が重要だと言われています。
バリアフリー整備のために、まちづくりの予算のうちどれ程がさかれるのでしょうか? それほど多くはないでしょう。ちなみにバリアフリー基本構想を作るだけでも、数百万円はかかります。ただ、今の時代、あらゆる分野で予算の多くが高齢社会に配慮した施策に使用されていると考えれば、間接的にはかなりの部分がバリアフリーに関係するとも言えるかもしれません。
海外では自転車の利用を推進しているとのお話がありましたが、日本ではそのような動きはないでしょうか? 日本でも自転車利用を促進しています。特に最近は、自転車レーンや自転車歩行者道など走行空間の整備とともに、自転車利用者のルール順守およびマナー啓発に力を入れています。
すみません、特にないです。 了解です。
エレベーターのない駅はエレベーターを設置するスペースがないから設置しないのですか? それともお金の問題なのですか? スペースとお金と両方ですね。例えばJR御茶ノ水駅は、近くに病院が数多くあるにもかかわらずスペースの問題でエレベーターが設置されていないのですが、2010年度末からエレベーター設置のための大規模な工事に着手しています。その他、公共交通のバリアフリー整備状況については、国土交通省のホームページ(http://www.mlit.go.jp/barrierfree/public-transport-bf/
public-transport-bf.html)をご覧ください。
身障者などだけではなくバリアフリーを多くの人にとって便利な形で成立させるときに、当然より大きな土地やコストが必要になると思うのですが、行政でなく企業が行う際に行政からの指導や補助(金)などはあるのでしょうか? あまり利益だけをみればメリットは薄いように感じるので。 おっしゃる通りです。例えば、公共交通や公共施設のバリアフリー化については、国の補助金や融資制度等のメニューが色々ありますが、商業施設についてはそのようなメニューがないようです。ただ、最近では、例えば子ども連れで買い物に行く時には、おむつ替えや授乳スペース、子どもの遊び場などが充実している商業施設を選択する人も多いので、お客さんを呼ぶためにはバリアフリーの整備が必要な時代になっているようです。
何か調査(アンケート)を行う際は、行政などの許可は必要ですか? 小規模であれば良いとは思うのですが。 「国の行政機関が統計調査を行う場合は、統計法の規定により、あらかじめ総務大臣の審査・承認を受ける必要があります。また、統計調査によらない基幹統計の作成や、地方公共団体や独立行政法人等が統計調査を行う場合にも総務省への通知や届出を行う必要があります。」とのことです。詳しくはこちらのwebsiteをご覧ください:http://www.stat.go.jp/index/seido/8.htm
環境問題と交通についてのお話をお聞きしたいです。自動車と他の交通のあり方等・・・。 後期の「都市交通施設計画」の講義で出てくると思います。
@旧理学部1号館前で新型点字ブロックのテストをやっていますが、都市工の交通研も関わっていますか?
A車いすで利用できるエスカレータについて、「足が不自由でつえをついており、階段が利用できない方」が車いすでエスカレータを通行止めにされて、エスカレータ前で立って待つという光景を目にしました。車いすの方のために他の方に負担がかかるのはどうなのでしょうか?
@関わっておりません。
A多様な移動制約者の中で優先順位をつけるというお話に関連すると思います。まあ、制約の大きい人から優先すべきなのでしょうが、非常に難しい問題です。
道路上のエスコートゾーンは車の通行によって摩耗してしまい、使える期間は短いのでは? 良いところに気が付きましたね! エスコートゾーンは5〜6年前から普及してきました。視覚障害者が歩道ではなく横断歩道であることを認識できるように、また自動車の走行によりブロックが摩耗しても長持ちするようになどの理由で、視覚障害者誘導ブロックとは異なる形になっています。警察庁が設置指針を定めています(www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/
kisei/kisei20070525.pdf)。
どの程度までバリアフリーの整備を進めればよいのか(細かいところまで見るときりがないので)、障害を持っている方とそうでない方との間で考え方の違いはあるのでしょうか? 一昔前と比較すれば非常に外出しやすい環境が整備されましたが、人間は目標を達成するとさらに上位の目標を設定するものです。また、移動制約のない人からすると、移動制約者は非常に細かい点についてバリア解消を要求するなと思うかもしれませんが、実際にそのような細かい点がバリアになっているのです。ということで、考え方の違いはあるでしょう。
@階段についている車いすの移動装置が試運転以外で実際に使われている光景はまだ見たことがないです。
A授業とは直接関係ないのですが、交通基本法の内容や制定へ向けての現状がどうなっているのか知りたいです。
@確かに、使われる頻度は低いですね。
A実は、交通基本法は、民主党が野党の時から提案されていたものですが、民主党政権になった2009年から交通基本法制定に向けて議論が行われていましたが、東日本大震災の発生や、「移動権」が時期尚早という議論など、現在は検討がストップしています(http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/
sosei_transport_fr_000040.html)。
先日障害者の方と話をした際、昔に比べればバリアフリーが格段に進み、非常にまちでの生活はしやすくなったとおっしゃっていた。しかしハードの整備にとどまっており、ソフトがなく、整備されたまちに出る機会がないので意味がないと言っていた。心のバリアフリーを浸透させていくにはどうすればよいのでしょうか? 例えば7月9日に都市工学の技術と倫理で行った「バリアフリー教室」のような取り組みが重要だと思います。
四段階推定法の4つそれぞれの違いがいまいちよくわかりませんでした。 簡単に言うと、発生・集中モデルは夜間人口や就業人口をインプット(説明変数)とした重回帰モデル、分布モデルは発生・集中交通量とゾーン間交通抵抗をインプットとした重力モデル、分担モデルはOD表と交通手段別ゾーン間交通抵抗をインプットとしたロジットモデル、配分モデルは交通手段別OD表とリンクパフォーマンス関数をインプットとした均衡配分モデルが最近の基本でしょうか。基本的には、対象地域全体の総トリップを、段階的に分けていく作業です。数式の細かい点は覚えなくても大丈夫です。
モビリティとアクセシビリティの定義の違いについて、多少あいまいなところがあります。回答よろしくお願いします。 簡単に言うと、モビリティは特に目的地を限定せずに個人の移動能力を表現する概念で、本来はポテンシャルを意味するものですが、顕在化した移動(トリップ数、移動距離など)をモビリティの指標と呼ぶことも多いです。アクセシビリティは特定の目的地へのアクセスのしやすさで、2地点間の移動コスト(時間、費用など)や一定時間内に到達可能な施設数などの指標で表現されます。その他の条件が同じであれば、モビリティの高い人はアクセシビリティも高くなります。しかし、交通は活動の派生需要であり、活動を行うことに対するアクセシビリティを考慮する視点が重要だと考えられます。また、バリアフリーの視点からは、バスやタクシーなど車両へのアクセシビリティという意味でも使用されます。
@交通システムの地域コミュニティとの関連・影響についてもう一度教えてほしい。
A心のバリアフリーを交通システムを通じて達成する手段は何かありますか?
@別の機会によろしくお願いします。
A直接的な回答ではないかもしれませんが、ハードの整備によってより多くの移動制約者がまちに出かけられるようになることで、人々のバリアフリーに対する理解や意識が向上するのではないかと思います。
@小型のGPSは普通に買えるのですか?
A世界中の人々にGPSがついている時代は来るのですか?
@買えます。
AGPSというか携帯電話を一人一台持つようになってきていますので、GPSがついているようなものですね。
STSのようなシステムや、鉄道やバスの乗降の際に乗務員が手助けするといった手法は、物理的には高齢者・障害者の移動可能性を保障するが、利用する人によっては心理的負担を感じるであろう。そういった観点からのバリアフリー対策はなされているのか? 答えになっていませんが、そのような心理的負担を感じないような社会を目指すべきだと思います。
町の中を通る交通システムが発達した時、それは町の人々の行動範囲をまちの中にしぼることになるのか、それとも外部への交通を促すことになるのか? 都市内交通と都市間交通のお話でしょうか? 都市内交通の整備によって都市間交通の結節点までのアクセスがよくなれば、都市内、都市間双方へのアクセスが良くなり、双方の移動が増加するのではないかと思います。
@前の授業でおっしゃっていたキャンパス内共有自転車についてですが、それらしき自転車を最近見かけます。具体的にどのように使用できるのか早く知りたいです。
Aハードのバリアフリーの整備は日本が進んでいるというお話がありましたが、都市工の他の授業でもよく出てくるドイツ等の整備はどのような現状でしょうか?
@7月の一ヶ月だけ計6台で実験しています。関心があれば大森までご連絡ください。
Aドイツへ先月行きましたが、ハードはやはり日本の方が進んでいますね。しかし、まちで見かける障害者や子ども連れの数(割合)は日本よりも多いように思いました。
これからの少子高齢化の時代にはバリアフリーの充実や公共交通の改善に注力すべきなのかそれとも費用対便益比の高い道路は今度とも作っていくべきなのかということはどのように考えていけばよいのでしょうか? 金銭に換算するだけでいいのでしょうか? 既存の費用便益分析では、便益の内容が非常に限定されておりますので、例えば、バリアフリー化によってこれまで外出できなかった人が外出できるようになることの便益がいくらなど計算できれば、費用便益分析に含めることもできるでしょう。しかし、世の中、お金で買えないものもたくさんありますよね。
日本は世界でも一番というくらいのスピードで高齢化が進んでいるので、バリアフリーも世界最先端を行くべきだと思うけれど、交通の面で日本から始まったバリアフリーなどはありますか? 色々あると思いますが、日本が発明したもので有名なのは視覚障害者誘導ブロック(点字ブロック)です。
非集計分析法がよくわからない 個人の交通行動の意思決定メカニズムを、選択肢集合の中から効用が最大となる選択肢を選択するという考え方に基づいて、選択確率を表現する分析法です。代表的なモデルがロジットモデルです。
特にないです。テスト頑張ります。 頑張ってください。
都市の交通に関して定量的に考察を進めていくのは興味深かった。途中に話す大森先生自身の体験談も面白かったです。 ありがとうございます。
テストにおいて押さえておくべき点、重要なポイントなどはどのあたりでしょうか? 少なくとも過去問は一通り勉強して下さい。
様々なパーソントリップ調査について学びましたが、そのような調査は実際何に活かされているのでしょうか? 具体的な例があれば知りたいです。また、どのような団体が調査しているのでしょうか? 都市圏パーソントリップ調査は、対象都市圏の移動実態の把握と、およそ20年後の都市圏交通計画を立案するために活用されています。調査実施主体は、行政(都市圏交通計画協議会のような団体)です。様々な活用事例は、国土交通省のホームページでも紹介されています(http://www.mlit.go.jp/crd/tosiko/case/index.html)。
特にありません。 了解です。
これから少子化に伴い、交通手段はどのように変化していくのでしょうか? 鉄道などの交通インフラ整備において日本は最先端ですが、人口減少に伴い、これらの施設が維持できなくなりそうな兆候はあるのですか? 既に2000年頃から京阪神では鉄道利用者が減少しています。東京でも今後、鉄道通勤者が減少することが予想されています。
都市交通システム計画において、一番大切なことは何だと思いますか? 教科書的ですが、対象地域において何が課題であるかを都市の目標と照らし合わせて的確に把握し、住民を含めて利害関係者の意見を十分に取り入れながら計画を立案し、PDCAサイクルを取り入れて状況の変化に応じて柔軟に計画を見直す、というようなことが大切だと思います。
テストでここは勉強しておけという所を是非教えて頂きたいです。 過去問は一通り勉強して下さい。
配分モデルについて、システム最適(総走行時間最少)と利用者最適、利用者均衡の使い分け(どのような場面、ケースではどちらが適しているか)がわかりません。どのように使い分けるのでしょうか? システム最適配分によって、例えば対象地域における総走行台キロを最少にする場合にどのように配分すれば良いかを検討することができますが、通常の需要予測では使用しません。
バリアフリーが進んでいる国はどこなのか知りたいです。 ハード面の整備では日本が進んでいると思いますが、欧米諸国と比較すると、まちの中に、高齢者、障害者、子ども連れなど移動制約者は少ないように思います。
@点字ブロックによって目の前に階段があるとか、エレベータがあるとかわかるのですか?
A完全なる国全体のバリアフリー化は可能なのでしょうか?
@わかりません。関連して、鉄道駅ホーム上の点字ブロックで、ホームの内側と外側を識別できるように、ホームの内側に線状突起を設けたタイプのものがあります。
A「完全なる国全体のバリアフリー化」が何を意味するかにもよりますので、ちょっとお答えできません・・・関連して、新しい技術がこれまでのインフラに適合しない場合や、新しい技術を利用できない人の存在など、新たなバリアが生まれることもありますので、やはりいつの時代にも常に環境の変化に応じて計画や施策を見直す必要があると思います。
授業で様々なモデルが紹介されていますが、個々のモデルに対してどの程度の理解度が求められていると認識すればよいでしょうか? 基本的な考え方を理解して頂ければ、細かい数式などは覚えなくても大丈夫です。

※参考:
2011年度のQ&A
2010年度のQ&A
2009年度のQ&A
2008年度のQ&A
2007年度のQ&A
2006年度のQ&A

さらに何か質問があれば、大森までご連絡下さい。
e-mail: nobuaki@ut.t.u-tokyo.ac.jp

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