エスニック

最終更新日:2012年7月17日

7月4日の「今日の課題」での質問と回答です。主なものをピックアップしています。


質問 回答
Demand Responsive Transportについて、導入例をもっと知りたいと思った 我が国でもたくさん事例があります(例えば、国交省のデマンド交通のサイトを見てみて下さい)。小型バス、ジャンボタクシー、セダンタクシーなど車両も様々ですし、運行や予約の方法なども多様です。定時定路線のバスを走らせると効率が悪い地域に導入されることが多いです。
供給と需要と政策の関係性が最も難しく、イメージがつきにくいです。交通を成り立たす要素も多く、関係性が難しいです。 「都市交通の政策体系」の表のことでしょうか? もちろん分類が難しく、他のセルにまたがるものもあります。また、都市計画も交通計画も、多様な主体が関係し、それぞれの主体ごとに価値や目標が異なるという点で、非常に複雑で難しいものだということを理解して頂ければと思います。
日本は自動車後進国と言われていますが本当でしょうか? ハンプやシケインを用いて歩車共存道路を作っても、例えば信号のない横断歩道を渡ろうとする歩行者を車が優先させないなどの致命的な問題があると思います。(欧米では車が100%譲るそうですが・・・) 確かに、日本では信号のない横断歩道を渡ろうとする歩行者がいても、多くの自動車は速度を落とさず通過していきますね。自動車だけでなく、自転車も、バリアフリーに関しても、人々の都市や交通に対する理解や意識を向上させることが重要だと思います。
時空間プリズムの有用性についてよくわかりませんでした。 一定の自由時間が存在する場合に、個人が利用可能な時空間領域を表現するものが時空間プリズムです。「固定活動場所」、「自由時間」、「移動速度」が変化することで、時空間プリズムの大きさが変化します。また、時空間プリズムに含まれる活動機会のみ利用可能なので、その自由時間で実行可能な活動は「活動機会の立地」、「活動機会の利用可能な時間帯」によって変化します。個人の交通行動に関わる利用可能な選択肢集合を時空間で特定できることが有用な点です。
講義を通して、最も疑問点の残るのは統計的数式を利用していた講義です。数式の意味や具体的手法などまとめていただければうれしいです。 うまく説明できずに申し訳ありません。ただ、数式そのものを覚えるというよりは、モデルの考え方やインプットとアウトプットがどのような変数かを理解して欲しいです。
モビリティとアクセシビリティの違いがよく分かりません。 簡単に言うと、モビリティは特に目的地を限定せずに個人の移動能力を表現する概念で、本来はポテンシャルを意味するものですが、顕在化した移動(トリップ数、移動距離など)をモビリティの指標と呼ぶことも多いです。アクセシビリティは特定の目的地へのアクセスのしやすさで、2地点間の移動コスト(時間、費用など)や一定時間内に到達可能な施設数などの指標で表現されます。その他の条件が同じであれば、モビリティの高い人はアクセシビリティも高くなります。しかし、交通は活動の派生需要であり、活動を行うことに対するアクセシビリティを考慮する視点が重要だと考えられます。また、バリアフリーの視点からは、バスやタクシーなど車両へのアクセシビリティという意味でも使用されます。
偶然、数年前の交通システム計画の講義資料を見る機会があった。今年のものとあまり変わっていないが交通分野でのホットトピックのようなものは何があるのか気になった。 交通計画における基礎的で重要な内容は、そう毎年変わるものではありません。ホットトピックは色々ありますが、私の関わっている範囲ですと、LRTとか自転車シェアリングとか公共交通ベビーカー利用などでしょうかね。
四段階推定法について用い方がよく分からなかった。 都市圏レベルで中長期の幹線交通網計画を立案するために適した交通需要予測手法です。各モデルのインプットは、発生・集中モデルは重回帰モデルで夜間人口や就業人口がインプット、分布モデルは重力モデルで発生・集中交通量とゾーン間交通抵抗がインプット、分担モデルはロジットモデルでOD表と交通手段別ゾーン間交通抵抗がインプット、配分モデルは均衡配分で交通手段別OD表とリンクパフォーマンス関数がインプットとなります。最終的なアウトプットは各リンクの交通量とサービスレベル(速度)です。また、発生・集中モデルは交通システムに関する変数(アクセシビリティ指標)がインプットになっていないことが課題として認識されています。
ロジットモデルが難しかった。 ロジットモデルの式、例えば選択肢が3つの場合には、P1=eV1/(eV1+eV2+eV3)、P2=eV2/(eV1+eV2+eV3)、eV3/(eV1+eV2+eV3)、V1=θ1X11+θ2X12+…、V2=θ1X21+θ2X22+…、V3=θ1X31+θ2X32+…、θはパラメータ、Xは交通サービスレベル(所要時間や費用など)や個人属性などの説明変数、は覚えて頂けると嬉しいです。
これまでの授業でパーソントリップ調査など実際にやりましたが、今まで生きてきてそのような調査を行ったことがないので、実社会で機能してるのかと感じました。 例えば都市圏パーソントリップ調査のサンプル抽出率は数%ですので、なかなか被験者になるのは難しいかもしれません・・・
コミュニティサイクルについて興味があります。一度江東区のコミュニティサイクルをレジャーで利用しました。交通手段が高価なため、1日500円でお台場を巡回できる自転車が本当に便利でした。しかし、その認知度は低く、他の利用者も少なかったです。コミュニティサイクルを流行らせるためには広告不足くらいしか課題が思い当たらないのですが、どうして日本では小規模な例にとどまってしまうのでしょうか? コミュニティサイクルだけの話ではないですが、日本では、まずは社会実験と称して小規模で一定の期間やってみて、うまくいくことが検証されれば本格導入へ、というパターンが多いです。首長の強いリーダーシップのもとで合意形成がうまくできれば、日本でも大規模に導入できると思いますし、コミュニティサイクルは大規模にやらないとメリットは小さいです。しかし、日本では自転車保有率も高いので、コミュニティサイクルの導入目的をしっかり考えないと、逆に狭い道路に自転車があふれてしまう可能性もあります。
コミュニティサイクルは観光客でも利用可能なのですか? 外人の旅行者だったら、どっかに放置されたり盗まれたりしても連絡を取る手段がなかったり、また帰国してしまっていたらどうしようもなさそうな気がするのですが? 観光客でも使えるシステムがほとんどだと思います。クレジットカードを登録することで、利用者の管理と料金の支払いをするシステムが多いです。
トランジットモールの写真を見て魅力的に感じたのですが、具体的にどういった車両の制限がされているのでしょうか?
また、歩行者が含まれない高速道路以外のもの、例えば自転車専用道路といった計画は存在するのでしょうか?
車両の通行を禁止して公共交通と歩行者と自転車のみ通行できる制限をするわけですが、特定の時間帯(夜間や早朝)などには荷捌き車両などは通行可能にしている例が多いと思います。
自転車専用道路もあります。
新しい交通手段が様々開発されていますが、局所的でなかなか全国的に成功している例があるのかよく分からなかったです。 全国的に高齢化が進行しているという視点からは、コミュニティバス、ディマンド交通などは、移動制約者のモビリティ確保のため、全国的に(成功しているかどうかは別として)普及している施策ですね。
世界の都市の交通問題の根底にあるのは中心部の過密であるように感じました。しかし、経済の発展と過密は切り離せない関係であると思います。ロードプライシングなどにより、都市構造のバランスが変化し、経済に影響が出た事例などはあるのでしょうか? その通り、特に東京は人口と活動機会が集中しすぎていることが、多くの交通問題の原因ですね。ロードプライシングによって都心部の自動車交通量は確実に減り、課金エリアの境界付近で商業に多少影響が出たりしますが、課金額やエリアの変更なども比較的容易なので、都市構造を変えるまでの効果はないのでは。
LRTの具体的な定義というのはあるのでしょうか? 低床車+停留所のバリアフリーだけですか・ 我が国では「低床式車両の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する次世代の軌道系交通システム」と定義されています。
日本はロードプライシングを導入しますか? 私はこの政策がとてもいいアイディアだと思いますが、やはり全ての国ができるわけではないんですね。例えば、渋滞がひどい発展途上国には大変そうですね。そういうような国はどうすれば渋滞問題を解決できるでしょうか? 課金エリアの境界に何らかの機器を設置する必要があるので、流入路が多いと大変です(GPSなどで位置情報を把握すれば必要ないかもしれませんが)。また、そもそも市民の合意形成が難しいです。発展途上国の渋滞問題は鉄道やバスなどの公共交通機関が整備される前に急激なモータリゼーションが起こったことが原因であることが多いと思いますが、土地利用や施設配置も一緒に考える必要がありますして、大変難しい問題ですが、多くの研究者が取り組んでいますよ。
日本ではバスレーンなどの実効性確保に警察の違反取り締まりが必須で遵法意識の低さを感じますが、米・加のHOVでは取り締まりなどを行っているのでしょうか? 大規模取り締まりを行うと却ってコストがかかるように思います。 結構厳しく取り締まっているようです。

※参考:
2012年度のQ&A
2011年度のQ&A
2010年度のQ&A
2009年度のQ&A
2008年度のQ&A
2007年度のQ&A
2006年度のQ&A

さらに何か質問があれば、大森までご連絡下さい。
e-mail: nobuaki@ut.t.u-tokyo.ac.jp

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