オフィス紹介

宇都宮大学地域デザイン科学部社会基盤デザイン学科・都市計画研究室

1.はじめに
宇都宮大学の立地する宇都宮市は,北関東最大の都市(人口52万人)であり,東北新幹線で東京駅から約50分と東京からのアクセスも良く,世界遺産のある日光にも近い,鬼怒川も流れる自然豊かな地域です。また宇都宮市は,餃子のまちとして有名ですが,交通分野においては自転車先進都市,そして我が国初の新規導入LRT計画で注目を浴びています。

宇都宮大学は,栃木県で唯一の国立大学法人です。地域デザイン科学部のある陽東キャンパスは,JR宇都宮駅の東方約2.5kmに立地します。昨今の大学改革の流れも受けて,2016年4月,農学部,教育学部,工学部,国際学部に次いで,5つ目の学部として地域デザイン科学部が新設されました。地域デザイン科学部は,コミュニティデザイン学科,建築都市デザイン学科,社会基盤デザイン学科の3学科から構成され,文理融合の下で,魅力ある地域をつくるため,地域の課題を理解し,各地域の資源と特性を活かしたまちづくりを支える人材を育成することをポリシーとしています。地域と大学との共同研究,地域連携プロジェクト,教育の推進のため,「地域デザインセンター」も新設されました。社会基盤デザイン学科は,設立35周年を迎えた工学部建設学科建設工学コース(旧土木工学科)に所属していた教員が配置換えとなり,現在は,構造研究室,材料研究室,流域デザイン研究室,マネジメント研究室,岩盤工学研究室,地盤工学研究室,そして都市計画研究室と7つの研究室から構成されています。

2.研究室の状況
本研究室は,1985年に,古池弘隆先生(現宇都宮共和大学特任教授)と永井護先生が赴任された際に,「地域計画学研究室」として発足しました。その後,1994年に森本章倫先生(現早稲田大学教授)が赴任され,2010年より研究室名を「都市計画研究室」へ変更しました。そして,2013年4月に長田哲平先生が赴任し,2014年4月に森本先生が早稲田大学に異動され,同年9月に大森宣暁先生が着任しました。2022年4月現在のメンバーは,大森教授,長田准教授,土橋客員教授、田邉客員教授、博士後期課程3名(うち社会人ドクター1名),博士前期課程7名,学部生9名です。研究室は,教員部屋,学生部屋,会議室が,ドアを開ければ一体となる空間として設計されており,学生全員に机とパソコンが割り当てられています。学期期間中 に毎週行われる研究室全員参加の全体ゼミで,研究指導および情報 共有を 行う他,学生が中心 とな って各 種ソフ トウェアの使い方などを自主的に学ぶテーマゼミを行っています。また,宇都宮市主催の「大学生によるまちづくり提案」にも毎年参加し,研究成果をもとにした具体的な提案を行っています。その他,新歓コンパ,忘年会,追いコンなどの飲み会をはじめ,学科研究室対抗ソフトボール大会への参加や ,伝統行事である「3大学合同合宿」と 称した 他大学の研究室との合同ゼミ合宿など,各種イベントを実施していますが,全てのイベントの運営は学生が主体となっています。さらに伝統行事として,年度末には,研究活動等でお世話になった学外の方々,卒業・修了生の親族の方々等をお招きし,「外部発表会」と称して卒業・修了生の研究成果を広く学外に発信する機会を設けています。

3.研究テーマ
本研究室では,都市計画,交通計画全般に関わる研究を行っていますが,ここでは現在の2教員の主な研究分野を紹介します。大森教授は,都市交通計画,活動・交通行動分析,バリアフリーのまちづくりを専門としています。最近の研究テーマを以下に挙げます。

・バリアフリーのまちづくり:高齢者,障害者,子育て世帯を含めて,誰もが安全・安心・快適な生活を送られるまちづくりを目指した研究を行っています。2014年に土木学会土木計画学研究委員会において「少子高齢社会における子育てしやすいまちづくり研究 小委 員会」(2017年より,「子育てしやすく子どもにやさしいまちづくり研究小委員会」)を立ち上げ,都市計画,交通計画以外の多様な分野の研究者,実務者 ,行政 ,NPOなどの関 係者 を巻き込んで研究活動を行っています。また,現在,博士後期課程に在籍する土橋喜人氏が,交通バリアフリーにおける当事者参加の実効性に関する研究に取り組んでいます。

・移動の意味:「人はなぜ移動するのか?」という交通研究分野における根源的な問いに対して,交通の本源需要と派生需要 ,正の効用と負の効用 ,旅行時間一定の法則等 の理 論をベースに,若者,高齢者,障害者など多様な人々を対象に移動の本質を追求する研究を行っています。

・夜の都市計画:従来の都市計画が昼間の都市活動を主たる計画対象としてきたという認識から,夜の生活活動に着目して,生活の質を向上させる都市と交通のあり方について研究を行っています。一時期,家事や 育児に支 障をきたすという理由で研究を中断していましたが,昨年度より 再開 することができました。現在は,宇都宮市のとある繁華街再生に 向けて,まずは実態の把握に取り組んでいるところです。長田助教は,都市計画,交通計画を専門としています。最近の研究テーマを以下に挙げます。

・自転車・歩行者交通:宇都宮市の中心市街地や幹線道路に自転車・歩行者の自動計測器を設置し,交通量,速度,通行位置の常時観測データを用いて,自転車利用の実態や自転車走行空間および自転車歩行者共存空間の望ましいあり方について検討を行っています。

・3DVRの応用: 宇都宮のLRT計画において,市民に対する具体的で丁寧な説明や交通安全対策が必要であるとの認識 から,LRTが開通した際の街並みの変化や自動車ドライバーへの影響を検証するために,3次元ヴァーチャル・リアリティ技術 を活 用したCGを作成しています。宇都宮市のLRTのオープンハウスで実際に活用されており,博士後期課程に在籍する永井徹氏とさらなる改良に取り組んでいます。

・土地利用と交通,物流:コンパクトシティの実現など,都市構造の変化が都市内物流に与える影響を検討しています。また,博士後期課程に在籍する田部井優也氏と大規模商業施設の交通アセスメントの方法についての研究にも取り組んでいます。

4.おわりに
人口減少・少子高齢社会において,地方大学は,これまでにも増して,地域への貢献や地域との連携を期待されており,研究成果が地域の具体的なまちづくりに貢献することも求められているように感じます。また,他大学も同様の状況だと思われますが,栃木県内外自治体の都市計画,交通計画関係の審議会や委員会に学識経験者として参画を求められる機会も多いです。この1月に,研究室のOB・OG会と合 わせ て,古池弘隆先生の喜寿 を祝う会を 執り行いました。良き伝統は引き継ぎつつ,世の中の変 化に伴い新しい試みも加えながら,伝統のある都市計画研究室を盛り上げていきたいと考えております。

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(古池先生の喜寿を祝う会,2018年1月20日)

宇都宮大学地域デザイン科学部社会基盤デザイン学科・都市計画研究室, 交通工学, Vol.53, No.2, pp.52-53, 2018.4 を元に、時点終点を加えています。